2011年11月6日日曜日

特発性血小板減少性紫斑病 記事

  特発性血小板減少性紫斑病 難病カルテ 
 患者たちのいま/17

毎日新聞社 1023() 配信

 ◇「毎日笑顔で」願い 将来の不安も活発に成長

 
 白石町の永石照美さん(39)の次女実里さん(9)は、
家から帰るとすぐ外に飛び出す。柔らかいボールで遊ぶのが好き。
仲の良い姉萌乃さん(12)とからかい、はしゃぎ合う。
活発で明るく、笑顔を絶やさない。
そんな実里さんは「特発性血小板減少性紫斑病」を抱え、生きている。

 2回目の誕生日を迎える直前だった。
風邪を引き、舌に紫色のできものが目立った。
かかりつけ医に行くと、採血で血小板が計測できないほど少なかった。
別の病院に移り、半年間の経過観察後、正式に診断された。

 体に衝撃を受けるとあざが広がる。
けがを防ぐため、入院中はベッドの角をクッションで包んだ。
くしゃみすら「勢いで毛細血管が破裂し、失明するかもしれない」と言われた。

 
 
小学校ではサッカーやドッジボールは控えている。
運動会の一部の競技ではテントに一人、座る。
照美さんは、その姿を見るのがつらい。

 親としては、できるだけ多くのことに挑戦してほしいとも思っている。
夫篤さん(40)も「なんでんさせてみ」と背中を押す。

 「病気を持っているから……」と
心配しがちな照美さんの思いとは裏腹に、
実里さんは「じっとしていない元気いっぱいの子」に育った。
自転車にも乗れるようになった。

 
 それでも不安は消えない。
昨年初めて鼻血を出した時は止血まで1時間半。
女性として成長する上で、どのような問題が出てくるのか。
結婚、出産……。同年代の患者にまだ出会えず、
病気とどう付き合っていけばいいのか、不透明なままだ。

 
「経過観察」の状態が続くが、風邪を引いたりけがをしたりすると、
血小板が一気に減る。一時的に投薬治療をするが、副作用への懸念も強い。

 「私のせいだ」。
妊娠中にインフルエンザにかかった照美さんはそう思い続けていた。
医師、家族から否定されても、自分を責めた。

 
 悩む照美さんに、障害児と暮らす知人が声をかけてくれた。
「子どもは、自分の面倒を見てくれる人を選んできとっけんね」。
その言葉に、救われた。

 
 病気のこと、どう思う? そう尋ねると、
実里さんは「何も考えてないよ」と照れたように答えた。
その様子を見て、照美さんは不安をぬぐうように言った。
「毎日、笑っていてくれれば、
こうして普通に過ごしてくれれば、十分ですもんね」【蒔田備憲】



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 ◇特発性血小板減少性紫斑病

 出血を止める役割を持つ血小板の数が減少し、
出血しやすく、止まりにくくなる。
病気などから体を守るために作られる「抗体」が、
何らかの理由で血小板に対して作られてしまい、血小板を破壊することが原因。
皮膚や歯茎からの出血、鼻血、重篤な場合は脳出血を起こすこともある。
医療費助成の対象になる特定疾患に指定されており、
09年度に助成を受けたのは約2万2800人。


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